先日電車に乗っていて、ガタン!とちょっと大きく揺れた瞬間。
ドサッという音が。
持っていた荷物を落とした、程度の大きさではない音にびっくりして目をやると。
そこに、10代後半~20代前半と思しき女性が、バッタリと倒れていた…。
見ていた私は、唖然としたのち、ある種の危機感を覚えました。
その女性は、ごく普通の若い方。
ハイヒールを履いていたわけでもなく、大きな荷物でバランスを崩したわけでもなかったのです。
ただ、ちょっとした揺れに対応できるくらいの踏ん張れる筋肉がない。
自分で自分の身体を支えられるだけの芯(コアマッスル)がない。
「危ない!」と思った瞬間に吊り革をしっかり掴めるだけの瞬発力がない。
それに彼女の転び方にも、違和感を覚えました。
ただバランスを崩しただけなら、普通なら、尻もちをつくはずなんです。
ですが、バッタリと人形が倒れるように、膝や関節が固まったままで床に真横に倒れていたのです。
筋肉が咄嗟に反応できておらず、立っていた姿のままでした。気を失ったわけではないのに。
幸い頭などを打ってはいないようで、周りの人が彼女に手を伸べて起こしてあげていました。
その女性は、恥ずかしそうにしているだけで、ちょっと大きな揺れで、バランス崩しちゃった、くらいにしか思っていないでしょう。
ですが、ヨガ講師として年間1500本くらいのレッスンを担当し、何百人の方の身体や動きを見ている私としては、ものすごくびっくりした光景でした。
転び方がおかしいだけでなく、若い女性の身体能力が極めて落ちていることの象徴だと思いました。
今、たくさんの方の身体を見ていて、特に10~20代女性の身体が弱くなっていることに肌感覚として気付いています。
同じグループレッスンをしていても70代の女性の方が力強く、矍鑠(かくしゃく)としっかり動いていることが多い。
同じ動きでも、もっと若い20代女性の方が不安定で出来ていなかったり、伸ばすべき筋肉が伸びていなかったり、という場面をよく目にします。
もちろん、個人差は明確にあり、「ナン十代」と一括りにするのはいささか雑だとは思いますが。
最近の日本人の身体。特に都会に暮らす人々の身体。その「質」自体が低下しているのでは、と懸念しています。
生活環境の変化。便利なことが増え、自分の肉体を使う必要が昔ほどなくなったこと。
洋式トイレの普及で足腰が鍛えられなくなったこと。
たくさん歩かなくなったこと。
…もっとたくさん理由はあるのかもしれません。
身体への感覚そのものが鈍ってしまうと、「失体感」を生み、それは肉体のみならず、そこに宿る「心」の病に繋がるのです。
このお話は、また改めて書きたいと思います。
私たちに与えられた、この「身体」を最大限に、大切に使いたいですね。